NPO法人PEACE ON相澤(高瀬)香緒里による日誌的記録(~2007年まで)


by peaceonkaori
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31

ハニさんに近づく、個展はじまる

20日、前日5時まで仕事などに追われていたため、11時に起きてしまう。顔も洗わず、ハニさんにおはよう。先に起きていたハニさんが卵を焼いてくれた。
ハニさん、近所を散歩するといってお出掛け。そのお土産に、可愛らしいお花をプレゼントしてくれる。こころから、うれしい。そう、アンマン滞在時の文章を読み返してみると、「~してもらった」「~しれくれた」というフレーズがやたら目につく。イラク人、アラブ人と接していると、そんななのだ。

夕刻、アンマンからの約束どおり、ハニさんにわたしの油絵を描いてもらう。2時間ほどで描きあげるハニさん。思うような画材がなかったので出来ばえに満足していないようだったけど、それは黒田清輝なんかの明治・大正期の絵画にあらわれる日本女性のよう。やはりわたしの顔は大正浪漫なのか…。アンマンで描いてもらったスケッチは目が細かったので瞳を大きくしてねと云ったのだが、やっぱしちいさい。モデルと画家というのは、1対1の真剣勝負。見つめられると、しゃん、とする。だけど、友達の4歳のリちゃんがわたしの周りをちょこまかちょこまか遊びに来るのをわたしがかまうので、幾度もハニさんに「カオリ、ストップ」と注意される。リちゃんは完成した絵に「かおりんだ」とびっくりしつつも、「でも目がちいさいからダメ」とのご批評。作品は、トップのポートレートにしてみました。
PEACE ON会員のレちゃんのお家で夕飯をご馳走になっている最中、突然リちゃんが泣きだした。ハニさんが「イラクにおいで」と誘ったからだ。リちゃんは4歳なのに、イラクの惨状をよくわかっている。怖くて嫌いと云っていた。わたしは、今は怖いかもしれないけどすき。

ハニさんと目を合わせて笑う、「昨日のわたしとおんなじやね」と。
ゆうべハニさんとYATCHが話しこんでいる間、わたしはほとんどなにも云えなかった。ハニさんが寝に行った後になってわたしは泣きじゃくり、ハニさんのお部屋をノックすることになった。扉を開けて驚くハニさん、そりゃそうだ。「わたしの払った税金がイラクの人びとを殺しているの、わたしがイラク人を殺しているってことなのよ」と主張する。ハニさんは「それはシステムの問題で、カオリは気にしないで」と云ってくれるのだけども、噴出したわたしはおさまらない。だって、ずっとずっとこころにあった謝罪なんだもの。「わたしはイラクのお家1軒1軒をまわって謝りたい、ミスター・ハニ、アイムソーリー、アイムソーリー…」。「わかった、バグダードに帰ったら、日本にこういうおんなのこがいるってことを伝えるよ」とハニさんが云ってくれる。YATCHには、「泣くだけではなにも解決しないじゃないか、僕らは地道にやるしかないんだ」と叱られる。たしかにそのとおりで、それはハニさんもわたしも認めるところだ。ごめんなさい、戯言とは承知でハニさんにぶつけてしまったのだった。

e0058439_450931.jpg21日の個展初日には、ハニさんはスーツにネクタイ姿でご登場。絵描きさんとしての個展への意気込みが、びしびしと伝わってくる。 それでも笑顔でチャーミングなところが、イラーキーなのだけれども。
大勢のかたが観にいらした。記者会見もオープニングパーティもぶじ終了。わたしは記者でもないのに、記者会見で質問してしまう。だけどその質問がハニさんの気に入ったみたい。
ハニさんの絵からは、何千年にも及ぶ豊かな歴史をかんじさせるし、このたびの個展ではギャラリーの中央に立ってぐるりの壁から迫ってこられそうな勢いを享ける。そしてお聞きしたかったのは、今回の新作の1つに、かれのこどものルカイアとハッスーニの描いた絵が用いられている、そのことについて(ルカイアの描いたミサイルを落とされているおんなのこは、わたし?)。こどもは未来を象徴する、ハニさんはつまりそれを描こうとしたのか、と。かれは「ありがとう」と云って、答えてくれた。爆撃音を聞いて育ったこどもへの思い、そして託す未来。あの愛らしいルカイアもハッスーニもナバもムスタファも、そしてイラク中のこどもが爆撃音を耳にして暮らしている。その事実に、わたしはどう対峙できるのか。

e0058439_4502496.jpg22日、イラク大使と参事官がギャラリーに来てくださる。温和な大使は、作品に微笑みながらたいせつそうに観て回ってらした。ファルージャの出身らしく、わたしが驚いたのは「市民は市民、政府は政府、市民同士っていうのが大事なんですね」なんて云われたこと。やるではないですか、大使。月末には夕食にお呼ばれまでしてしまいました。

ハニさんと2人で帰る途中、わたしは反対方向の地下鉄に乗ってしまう。5駅! かれはニヤニヤ許してくれるのだけれど、その後ずーっと「ハムサ(ファイブ)ステーション」と繰りかえしてわたしをからかうんであった。「カオリには2つも弱みがある。まず1つ、夜に泣き出したこと、そんでハムサ・ステーション」なんて意地悪く笑うもんだから、こちらもすっかり内弁慶がとけてしまった。もうすっかり家族のよう。ハニさんは恋のお話をやたら聞きたがるのだけれど、本人はしんぱいでたまらない奥さんから毎日のように国際電話がかかってくるのですよ。
e0058439_450398.jpgそして今夜は、ハニさんが持参したバーミヤン(乾燥オクラ?)で、約束の夕ごはんを作ってくれたのだった! バーミヤンとチキンのトマトスープ。イラクの食べ物、イラクの匂い、イラクの味だと、行ったことのないわたしは想像してウットリする。大きなお鍋で作ったから、明日の朝食にもとってあるんだ。愉しみだから、明日は早く起きられるかな。
[PR]
by peaceonkaori | 2005-11-23 04:50 | イラク人来日プロジェクト