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NPO法人PEACE ON相澤(高瀬)香緒里による日誌的記録(~2007年まで)


by peaceonkaori
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「共謀罪に反対する大集会」報告

1つ前の記事「「共謀罪法案」に反対するNGO・NPO共同声明文への賛同」でも紹介したイベント、日本弁護士連合会主催の「共謀罪に反対する大集会」に今日26日に参加してきたので、以下かんたんに報告。

「共謀罪に反対する大集会」報告_e0058439_3221221.jpg会場の弁護士会館の講堂クレオは満杯にはならなかったものの、500名以上の参加者があったという。
わたしもじっとしていられなくて行った1人だ。ここのところ共謀罪について語るときのわたしが度を超して本気だからか、我が代表が「今は仕事なんて放ったらかしにしていいから、行って来な」と云ってくれた。実際にわたし達はゆうべも、午前4時まで焼酎のボトルを空にして話し合っていた。ありがとう、YATCH。

初めに、吉岡桂輔さん(日弁連副会長)から開会のご挨拶。

つづいて、海渡雄一さん(共謀罪等立法対策ワーキンググループ事務局長)が基調報告をなさる。以下は、レジュめよりわたしの要約。
たしかにマフィアやテロリズムへの対策は必要だが、人が悪さを口にしたという段で犯罪が成立する法をわたし達が選択すれば、恐ろしくてこころに思い描いたことを表現するすることもできない社会になってしまう。共謀罪、盗聴法、監視カメラ、入国時の指紋登録制度などがリンクし、国家権力にとって不都合な人間の一挙手一投足までが監視されることになるかもしれない。
犯罪とは、なんらかの被害が発生することと考える。事後的に警察が動くシステムが、近代刑法であるはずだ。人は悪いことを考えもするが、実行にうつすのはそのうちのわずかだし、未遂として終えたりもし、それらはこれまで犯罪とはみなされなかった。その原則を変え、合意だけで準備もしていないレベルで619もの犯罪類型の行為を検挙できるのが、共謀罪というやつである。それは、近代刑法の体系を根本から変更してしまう立法だ。
そもそも、9.11事件より前に国連で採択された「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」(越境的組織犯罪防止条約)を日本政府が批准するための国内整備として、共謀罪の法案が出てきたのだが、共謀罪法案はこの国連条約より、捜査機関の権限を大きくひろげたものとなった。実は政府は当初、共謀罪の新設は国内法の原則に反するといっていた。だのになぜ、ここまで過剰な立法を提案したのだろう?
与党から提出された修正案は、犯罪をもっぱら目的にしている団体に限定してはいないし、条約のように国境を超える行為に限定もされていず、条約の認める「合意を推進する行為」よりもひろく「犯罪の実行に資する行為」が必要とされている。「犯罪の実行に資する行為」は、準備する以前の精神的な応援ですら含まれるかもしれない。修正案は評価できない。
法案によると、実行前に警察に届け出た人間は、刑を減免される。これでは、人びとを疑心暗鬼に陥れ、密告社会ができあがる。共謀罪の証拠は、人の会話とコミュニケーションそのものである。捜査のために、電話やメールの傍受を拡大することになるだろう。
与党は修正案を出したからといって、28日にも衆院法務委員会での強行採決に持ち込もうとしている。しかし、あきらめるのはまだ早い。今国会は6月18日までである。参院では、外国人の指紋を採取してデータベース化する入管法案の審議が始まろうとしている。これも慎重に審議すべき法案であり、時間をかければ、共謀罪法案の成立を食い止められる手段になりえる。市民が反対の声を議員に送り、この国の自由な市民社会と民主主義を守り抜こう!

「共謀罪に反対する大集会」報告_e0058439_3222850.jpg集会には、野党議員も8名ほど駆けつけた。

民主党の菅直人さんは、ジョージ・オーウェル『1984年』のような管理社会を危惧されていた。
また、共謀罪は解釈に幅のある法であり、適用しようと思えばなんぼでもできると危機感を抱いてらした。

平岡秀夫さんは、「民主党が与党になったら、このような悪法は潰してやる」とやる気じゅうぶんだった。

社民党の福島みずほさんからは、今日に野党で反対に向け共闘していこうと決まった旨、報告があった。
再編、共謀罪、入管法、国民投票、教育基本法、と一気に悪政が押し寄せてきている、と嘆きながらも、対抗していくぞとこころ強いスピーチだった。

保坂展人さんは衆院の法務委員でもあり、共謀罪に深くかかわっていらっしゃるかた。
法務省は、共謀罪は乱発しないといいつつ、たとえば目くばせでの同意でも成立する(!)という解釈にもうなずいているという。
与党が強行採決を28日にこだわる理由は、GW前だからであって、GWを過ぎれば国民も忘れるだろう、という侮辱的な思い。「忘れるもんか、忘れさせへん!」と、わたしは憤慨する。

共産党の仁比聡平さんは、「民主主義を殺すのか」とまずお怒りになる。
「審議なく与党だけでやってしまうなんて国会のルールを破る気か。反国民性、反民主主義性で踏み躙られている。与党はケンカを売っているとしか思えない。売られたケンカは買うぞ!」と気勢があがったところで会場から拍手が。「拍手をした皆さんは共謀罪で捕まりますね」と、笑いを誘う仁比さん。「おお、捕まってやろうやないか」と、わたしなんかはつい調子に乗ってしまう。
共謀罪は市民生活のすべてが対象になること、テロ対策と治安強化の名の下に自由と人権が縛られることを、強調なさっていた。

赤嶺政賢さんは、共産党は法務委員がゼロなので歯がゆさでいっぱいだと語られる。たしかになにもできないことは苦しい、とその無念さを想像する。
衆院で通っても参院があるけども、なんとしてでも衆院で食い止めよう、とおっしゃっていた。

各界からも、ぞくぞくと発言があった。

森達也さん(映画監督)は、今の日本は「ビッグブラザー」でありそれは民意なんだ、と。わたしも常々、わたし達は見えない敵におびえている、おびえさせられていると感じている。皆、知らない。まずは知ることからスタートせねば、と締め括られた。

日弁連会長のスピーチでこころにとまったのは、合意の段階ではこころで思ったことと紙一重であり、思想を処罰することになりかねない、という警告。

外山雄三さん(指揮者)は、戦前、戦中、戦後を経験してこられた貴重なかた。当時は1人でも多く敵を殺したいと願っていたほどの軍国少年で、8月15日には念願かなわずで泣いたとまでおっしゃっていた。戦中は灯火管制をするのだが、空襲情報を得るためにつけるラジオのランプが「隣組」によって通告され、アメリカのスパイじゃないかと疑われるような時代だったという。オーケストラから考える平和、ベートーヴェン『第九』の自由・平等・連帯から導かれる平和の精神のお話を聞くことができてよかった。

星川淳さん(NPO法人グリーンピース・ジャパン事務局長)曰く、グリンピースは、国家や大企業による犯罪を止めて平和な社会になるべく活動しているのに、共謀罪のターゲットになっている。「そりゃあ、毎日キョーボーしていますからね」ですって。
PEACE ONも賛同した「共謀罪法案」に反対するNGO・NPO共同声明文(ご参照)には、わずか2週間で180ものNGOが表明したという。
「仮に共謀罪が成立したとして、すぐには大丈夫だろうが、時代が来れば政府や大企業によって恣意的に潰される可能性を100%ひめた天下の悪法だ」と強く訴えられ、拍手が起こった。

寺中誠さん(社団法人アムネスティ・インターナショナル日本事務局長)は登壇し、「どうも、越境犯罪組織のアムネスティです!」と一発かまされた。越境的組織犯罪防止条約を皮肉っての発言とはいえ、あながち冗談でもないらしい。というのも、国によってはアムネスティの会員というだけで犯罪になるという。昨日に釈放されたネパールの友人は、反国王のデモを組織したという理由で拘束されていたそう。
前回の記事で報告した上述の「共謀罪法案」に反対するNGO・NPO共同声明文の記者会見のあった19日にあわせるようにして、法務省はHPで「組織的な犯罪の共謀罪に対する御懸念について」と題して、「共謀罪は犯罪組織だけの話で市民団体は関係ありませんよ」という内容の文章をUPした。まったく、読んでいて溜め息の出るような代物だ。
「取り締まられるべきは政府側であり、それを市民の側に向けるなんざ言語道断だ!」と寺中さんは主張され、同意の拍手に沸いた。

全労連のかた(お名前失念)は、「うちら労働者なんて毎晩のようにガード下の飲み屋で、社長の首しめたろかーとか言っているんだから、日々逮捕ですよ」と冗談まじりに話されながらも、使用者責任などといって常に闘っている労組は、共謀罪によって死を宣言されたようだと嘆いておられた。

前回にも紹介した映画『共謀罪、その後』第1話の上映もあった。

脚本・プロデュースの寺澤有さんからのお話もあった。小沢一郎さんは「TVや新聞は自民党ばっかり採りあげてずるい」というような発言をしているが、今時ブログでTVや新聞で伝わってこない情報がどんどん流れるようになって1日に5万のアクセスがあるようなブログもあるのに、小沢事務所に共謀罪について問い合わせたら寺澤さんはフリーだからーというような訳の分からない対応をされたという。
これまでは市民にほとんど知られていなかった共謀罪だが、自民党が発言した金曜日以降、ウェブで検索してもかなりの数がヒットするようになったので、時間をできる限りひっぱって皆が知るようになれば、勝算があるんではないか、とおっしゃった。
「今日はキョーボーできる最後の日だ!」なんておっしゃって、そこでまた拍手なんてあったりして。

原案・監督の朴哲鉉さんは、韓国の国家保安法は現在でも存在するけれども、共謀罪にあたるような罪はないと報告された。法律というのは憲法より下に位置するはずなのに、憲法にある表現の自由なんかは守られないのか? と疑問を呈された。

閉会のご挨拶は、中村順英さん(共謀罪等立法対策ワーキンググループ前座長)から。
なにをもって共謀なのかが分からない。逮捕されるかもしれないと、「君子危きに近寄らず」じゃないけど、集会に行かなくなったりするだろう。
ラストは、「この集会も共謀だーっ。共謀しよう!」なんて勢いづいて終わりました。こんな感じで楽しかったような…まっいいか。

閉会前に、共謀罪ではないけれど、とても気になる法案について、松坂英明さん(日弁連副会長)より報告された。
その名は、「ゲートキーパー立法」。来年の国会で出る可能性があり、まだ議員もほとんど知らないようだ。
マネーロンダリングやテロ資金などの疑いのある取り引きを弁護士が依頼者から相談されたら、それを警察権力に「密告」しなければならない制度らしい。密告であるから、依頼者の秘密を死守しないといけないはずの弁護士がそれを依頼者に内緒で権力に通報する(依頼者に言えばペナルティ)。これは、弁護士制度を根幹から崩壊される悪法である。こんな法が通れば、依頼者は弁護士に不信感を抱きなにも相談できなくなる。いかなる強い権力とも闘って指揮監督を受けてはいけないのが弁護士のはず、それが弁護士が警察のスパイになってしまうだなんて。
日弁連は徹底的にこの法案に反対するそうだ。

ほんっと権力者はなにを考えているのか、共謀罪といいゲートキーパーといい、こんな次つぎと悪法を生み出そうとして、この国を壊滅させる気かと思いたくもなる。
わたしは伝統的な日本人の慎ましやかで清純な気質が気に入っている。こんな利他的でない強欲が剥き出しの政治や経済の状態には、吐き気だってしちゃう。わたし達の国をよくしたいから、わたしは踏んばる。
さあ、今から反対する法務委員に抗議ファクス作戦、そして反対議員に応援のファクスを送らなくっちゃ。まだまだできることはある、そう信じている。
by peaceonkaori | 2006-04-27 03:22 | 国内活動