NPO法人PEACE ON相澤(高瀬)香緒里による日誌的記録(~2007年まで)


by peaceonkaori
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2007年 09月 08日 ( 1 )

むしょうにティナ・アレナの「ジュマペール・バグダード」が聴きたくなる。昨年だったか、フランスにいた現地スタッフのサラマッドに教えてもらい、日本ですぐに取り寄せたんであった。
むっとするほど暑い長月の正午にいて、針の束をあたまに触れられたような、涙が胸につかえる息苦しさが迫りくる。人さし指で傷を撫でるような悲痛な旋律にフランス語の甘美な響きがあいまって、女王バグダードの哀しみをいっそう引き立たせている。サラマッドも号泣していたそうだ。
以下、かんたんに訳してみた。せっかくの詩が、わたしの拙い語学力のせいで台無しになってしまっていたらご免なさい。フランス語、数年間きちんと習っていたのにすっかり忘れている。

「我が名はバグダード」

わたしは幸福に生きていた 黒い黄金(*1)や宝石の宮殿で
チグリス河が水晶の石畳を滑る
千人のカリフがこぞって並ぶわ 我われの舞踏会のリスト

皆はわたしをこう呼んだものよ 寵愛に満ちた都と
神よ どれほどの時が過ぎたのでしょう

皆はわたしをこう呼んだものよ 光の首都と
神よ すべて失われました

我が名はバグダード
そしてわたしは落ちゆく
戦車の火のもとで 戦車の火のもとで
我が名はバグダード
醜くされた王女 シェヘラザード(*2)までも忘れてしまった

わたしはこの世を生きる
哀れな乞食として ブルドーザーのもとで
霊がわたしにつき纏う
廃墟で我が美に涙する なおくすぶる宝石に
これが暗殺されたわたしの魂

皆はわたしをこう呼んだものよ 光の首都と
神よ すべて失われました

我が名はバグダード
そしてわたしは落ちゆく
戦車の火のもとで 戦車の火のもとで
我が名はバグダード
醜くされた王女 シェヘラザードまでも忘れてしまった
わたしの千一夜物語はもう誰の興味も引くことはない
奴らはすべて破壊した

我が名はバグダード
そしてわたしは落ちゆく
戦車の火のもとで
我が名はバグダード
醜くされた王女 シェヘラザードまでも忘れてしまった

(*1)黒い黄金は石油の意
(*2)『千一夜物語』を語る王妃


イラクの友は皆、栄華を極めたバグダードを誇り高く語ってくれる。その顔は生き生きとしている。ただしそれらは、どれも昔のバグダードだ。今のバグダードは墓そのものだと、サラマッドは云う。繁栄の都から忘却の都へ、芸術の都から戦火の都へ。
都-最近つと思うのだけど、京の都に脈々と先祖代々息衝いてきた血が、わたしの身体を流れているのであって。古臭い感覚。でもこれまで己のルーツにあまりに無意識だった気がする。バグダードには遥か及ばないたかだか千年の都だけれども、それでも街にはかおりが匂うし霊のようなものが漂っている。すくなくともわたしはそう思う。都に生を享けた人間として、好むと好まざるとにかかわらず。
バグダードという失われた都を考える時、この知覚がわたしにより共鳴を与える。まるで倍音のようなこの関係を、わたしは個人的にたいせつにしようと思っている。
バグダード、わたしの夢。いつか訪れる日を愉しみに、ええかならず。

YouTubeでプロモーションヴィデオがあるので、1曲まるごと視聴できます。ライヴなど他ヴァージョンも色々検索できるので、ぜひどうぞ。
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by peaceonkaori | 2007-09-08 19:24 | 読書/鑑賞